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    Categories: 働き方

電通のクライアント企業で働く元同僚たちへ

日本中のクライアントが
「自分たちもよその会社の若い人を殺してしまうことがあるかもしれない」
と思えるかどうかだ。

引用元:HUFFPOST BLOG「電通には鉄槌が下されたが……?」

思っていました。

電通のクライアント企業の広告宣伝部に在籍していたあいだ、ずっと。

電通新入社員の自殺がメディアで盛んに取り上げられていたとき、すでに会社をやめて1年以上経っていましたが、大変不謹慎ながら最初に頭に浮かんだ言葉はこれです。

「危なかった」

あのまま会社に残っていたら、わたしも電通の社員を死に追いやっていたかもしれない。

加害者になるところだったと、青ざめました。

ニュースを見て、電通の体質が問われていることに大いに違和感を感じ、いや、違うだろ、そっちじゃないだろ!と、ひとり憤り。

この事実を知って、元同僚たちはなんと言っているのだろうかと想像し

「甘いよね~」

「ウチの担当のAさんにも死なれないように気を付けないとね~」

そうニヤニヤ会話する姿を勝手に思い浮かべ、胸糞悪くなりました。

そんな会話をしていなかったのならごめんなさい。でも想像してしまった。

電通の営業に対して

「無理難題を押し付けて当たり前」
「決まっていたものが直前でひっくり返るのも仕方のないこと」
「そこを上手くやりくりするのが電通の仕事」

そう信じて疑わず

「上層部のNGが出ちゃったんで、イチからやり直しでお願いします」

22時過ぎにぬけぬけと連絡することを平気でやってのける同僚に対し

人間が腐っているなと思いました。

天下の電通社員にダメ出しできる自分をカッコイイと思っているのなら、救いようのないアホだとも思いました。

ごめんね。元同僚に酷い言い方ですね。

でも、本気でそう思っていました。

「佐藤さんは業者にいい顔するから、甘いから」

そう言われたときには、殺意を抱きました。

退職時の送別会で、直属の上司の言葉に感極まり、みんなの前で泣きましたが、帰宅後に寄せ書きだのプレゼントだのを開きもせずゴミ箱に投げ捨てました。

そのくらい、仲間のことが嫌いでした。
二度と関わりたくない、顔も見たくないほどに。

退職してもうずいぶん経ったのに、電通社員自殺のニュースに動揺し、在職中の苛立ちを鮮明に思い出し、くすぶったままの憤りがまだ自分の中にあると気付いたとき、ようやくわかったのです。

なにが嫌で会社を辞めたのかを。

電通だけじゃない、関わるすべての協力会社に対し、無理難題を押し付ける同僚と
そのやり方は間違っていると、正すことのできない自分が嫌だったのです。

わたしの元同僚だけじゃない。
思い当たる節のある、すべてのクライアント企業の担当者に言いたい。

わたしたちにとって、痛いところ突かれまくりの本が出ています。

これを読むと、わたしたちの浅はかさなど、電通社員はすべてお見通しだったことがわかります。

とくに序章は、何度読んでも初めて読んだときと同じくらいに胸がザワつきます。
申し訳なさと情けなさで泣けてきます。

そんな本、知~らない!と、スルーしてもいいかもしれません。

でも、読んでしまったら最後、自分の過ちに気付くでしょう。

だってみんな、ホントは悪い人じゃない。わたしはそれを知っている。
机を並べて仕事をしていたから。

上司に逆らえない
大きな組織の中で自分の正義を貫けない
罪悪感を殺して殺して仕事をやり遂げる
真面目すぎるほど真面目なひとたち。

真面目で思考停止なひとたち。

まるで戦時中のようだ。

いまならまだ引き戻せるかもしれないから。

人間に戻れるかもしれないから。

無理難題を押し付けている相手は、電通だけじゃないはずだから。

ダイジョーブか?と、わたしが肩を揺さぶりたい、元同僚たちと、電通のクライアント企業のみなさんにこそ読んでほしい。

『広告業界という無法地帯へ ダイジョーブか、みんな?』(毎日新聞出版)
http://mainichibooks.com/books/business/post-390.html

中にいたひとじゃなくて、外側の「電通のお客様」であるわたしたちが
「ウチの会社の広告、電通が作ってるの!」と、得意気に友達に自慢してきたわたしたちが
捻じれた感情を抱きながら電通に強いてきたことを語らなければ、たぶんなにも変わらない。

さとちゃん: 1973年早生まれ。2023年8月から老老認認介護をサポートするため実家暮らし。推しはSixTONESジェシー。使命はライトワーカーとしての任務を果たすこと。