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湘南パン祭りとわたし

湘南パン祭りとは・・・の説明から書くべきなのでしょうが、かったるいので省略したい。

うん、知ってる!

聞いたことある!

行ったことある!

辻堂海浜公園周辺が大渋滞して会場に入れず、まじでムカついたあのイベント?

ボランティアとして参加してました!

パン屋として出店してました!

という人だけが、このブログを読んでいると決めつけて書き進めます。

街の小さなベーグル屋さんが叶えたかった夢

湘南パン祭りの実行委員長は、茅ヶ崎にある「まるなかベーグル」の創業者夫婦の妻のほう、中(なか)さんです。

あちこちのイベントに出店していた中さんは、湘南エリアでも同じようなイベントをやりたいと野望を抱き、「湘南パン祭りやりたい、湘南パン祭りやりたい」と、事あるごとに口にしていたそうです。

あるとき、そんな中さんの「わざとあちこちで言いまくっている野望」が辻堂海浜公園園長の耳に留まります。
園長が興味を持ってると聞いてすぐに会いに行き、一緒に都内のパン祭り見学にまで出かけて行ったところ

「このイベントはいける!」

と、(園長が)確信を持ち、開催するに至ったとか。

ちなみに、開催前の準備段階から一貫して「ものすごい人が集まるイベントになる」と予測していたのは、園長だけです。

私たちは「初回だから認知度低いし、園長が言うほど人は集まらないと思う(ヒソヒソ)」と陰で言っていました。

中さんにスカウトされる

そのときのわたしは、FBグループの地域コミュニティ(有料)を運営していました。
ある日、中さんから入会申し込みが入ります。

会って話してみると、コミュニティに入会する条件として、第一回パン祭りを手伝ってほしいという。

お安い御用ですわ。
なにやればいい?ブログで集客?SNSで告知?それともホームページ制作?

「それらも全部やってほしいけど、そんな必死に集客しなくてもポスターだけでお客様は集まると思うから、運営メインでお願いしたい」

「初回はボランティアになっちゃうんだけど!(クスクス)」

なんでわたしに運営を任せようと思ったのだろう。
イベント絡みの仕事の経歴をブログに書いた覚えはない。書いたっけな?
でもその見立てはかなり正しい。わたしは生まれついての仕切り屋だ。

そしてここで注目してほしいのは、初対面の人にいきなりバーターで話を持ちかけてきて、しかも相当な稼働量が想定されるのに「初回はボランティアで!」とシャラっと言い切るところ。すごい。なんという図々しさ。わたしには無理。

運営メンバーはフリーランスの集まり

そうして中さんが集めた初回の運営メンバーは全員ボランティア。

ポスターやチラシ作成担当のデザイナー
店舗紹介の記事を書くフードライター
茅ヶ崎円蔵で美味しいパンを作っているJiJiさん
ホームページ制作ディレクション、SNS告知、運営仕切り担当のわたし。

全員が専門性を持っていて、お互いの領域に口出しをしないので、とても円滑にまわるメンバーでした。ちなみに初回の運営メンバーは全員女性。

全力で手伝おうと決意した出来事

ふんわり引き受けた初回パン祭りの運営ですが、こんなにも大掛かりで一般の人を集めるイベント開催はやったことがないので大いに不安。とっても不安。

なので、小田原の「カミイチ」の設営ボランティアに早朝から参加してみることに。
この日、まるなかベーグルも出店することになっていたので、中さんのイベントでの様子も見られる。

飲食店だけではなく、クラフトのお店なども参加するカミイチは、出店者が早くから来てお店の設営と飾り付けに精を出す。
次々とお店が仕上がっていくなか、一向に現れる気配のないまるなかベーグル。

え?まさか遅刻してくる?

ようやくやって来たのは、開場5分前くらい。

本当にギリギリのギリギリに来て、車からベーグルの入ったケースを次々と運び出し、組み立て式のテーブルにベーグルを並べていく。慣れた様子で。目にも止まらぬ速さで。

ベーグルを並べる中さんたちの前に、お客さんがわらわらと列を作る。

「まるなかベーグルさんが来てるけどいくつ買う?一緒に買っていってあげるわよ」

列に並ぶ女性が、携帯でだれかと話している。

あれよあれよという間に、どの店よりも長い列ができ、販売開始20分で売り切った。

感じ悪い・・・

最高に感じ悪い・・・

準備に5分。売り切るまで20分。
完売後にやってきた女性のお客様に中さんが怒られていた。

「楽しみにしてきたのに!!」

すごいものを見た。

ベーグル屋を始めるまでの経緯は、すでに中さんから聞いていた。

パン屋をやりたいと言い出した夫に、パン屋は厳しいからせめてベーグルにしてくれと多少の方向転換をさせ、夫婦共に未経験でイチから始めたベーグル屋。

夏場に売り上げが伸びず、スタッフさんにお給料払えない!どうしよう!という苦難も乗り越え、ようやく軌道に乗ったベーグル屋。

買えなかったお客様のクレーム対応をしている中さんのことを
少し離れたところで眺めていたら涙が止まらず。
これまでの中さんご夫婦の苦労が、なぜか走馬灯のように蘇ってしまう(見てないけど)共感力の高さゆえに号泣。

わたしが手伝う湘南パン祭りは、街の小さなベーグル屋さんが単なる思いつきでやろうとしているイベントではなかった。

夫婦ともに脱サラして、ベーグル屋を開業し、数々の苦難を乗り越えてお店を軌道に乗せたその先にある、更なる野望なのだなと理解。
人はストーリー性のあるものに惹かれる。とくにわたしは。
このとき、全力で手伝おうと決意したのでした。

(下の写真は運営を学ぶため川越パン祭りにボランティア参加した時の様子)

初回の湘南パン祭り

開催当日朝。

列整備に入ってくれるボランティアさん数十名にポジションを説明したあと、「お客さん来てくれるか不安だね〜」なんてみんなとわちゃわちゃ話しながら、控室に戻る途中。

明らかにスタッフではない女性が、パン祭り会場であるプールの門の前に立っていた。

ん?なんだろう?まだ開始一時間前なのに。

わたし
「もしかして、パン祭りのお客様ですか?まだ開場1時間前なので並ばなくても大丈夫だと思います(ニッコリ)」

お客様
「いえ、並びます(真顔でキッパリ)」

え?

控室に戻り、中さんに報告。

なんかもう並んでるお客様いるんだけど。

ええ?

ふたりで門の前に行くと、先ほどの女性の後ろに列ができている。

えええ?

やばいやばい。やばいやばいやばい。

わたしはまだこの時点では、やばさに気付いていなかったけれど、イベント出店経験豊富な中さんは青ざめていた。

やばい。まずい。ものすごいことになる。
絶対にパンが足りなくなる!

結果、えらいことになりました。

長い1日

あれほど1日を長く感じた日はない。

もう丸一日会場にいる気がするのに、、、時計の針は午前11時。
開場して1時間しか経っていない。そのくらいてんてこまいだった。
運営リーダーとして、平常心を保ち、次々と持ち込まれる問題に対処していくのに必死だった。

イベント終了後の打ち上げで、中さんが運営メンバーに感謝の気持ちを述べつつ男泣きし、わたしも隣でもらい泣き。

新しいことを始める人へのエール

ゼロイチが好きで得意です。
ホロスコープを見ると、そういう星のもとに生まれついているらしい。

反面、一度完成したものをブラッシュアップしたり、継続させていくことは、興味がなくて苦手。

そして人が立ち上げる企画のお手伝いが大好きです。

自分で立ち上げたものより、成功したときの喜びが倍増するというのをパン祭りで知ったから。
わたしはたぶんアシストタイプ。
批評家にはならない、めちゃめちゃ動く乗っかりタイプ。

パン祭り前日の設営準備中。
毎回、中さんが不安そうな顔でつぶやく。本当に毎回。

「お客さんが来てくれなかったらどうしよう」
「パンが足りなくなったらどうしよう」

相反する二つの不安をブツブツと呟きながら、本当に憂鬱な顔をして、しまいにはこんなことを言い出す。

「なんでこんなこと始めちゃったんだろう?」

ウケる。まじでウケる。
これだけ多くの人を巻き込んでおいて、なに言ってんだあんた。

憂鬱な顔をした中さんの隣で「また言ってる」とツッコミを入れるのが楽しかった。
いつもいつも。

**********

さて、このブログをさちこさんと平井さんに向けて書いてます。
ふたりがそれぞれに始めようとしている企画が本当に楽しみです。

ふたりに向けるエールとして、湘南パン祭りの実行委員長を次の世代にバトンタッチした中さんが、最後に関係者に向けて書いた投稿を貼っておきます。

集客に成功したイベントは、キラキラした部分しか伝わってこないけれど、キラキラの裏には、キラキラと同じ分だけ、苦労も葛藤も失敗もあり。

中さんの投稿が、少しでもふたりを勇気づけますように。

皆様、ご無沙汰しております。中です。


今日は、湘南パン祭りについて、また今後について少し長文で書かせて頂きます。
2021年2月に開催予定だった湘南パン祭りは中止になりました。
去年も開催1週間前になって、突如中止になったパン祭りですが、それから1年経ってもコロナが収束しないとは、想像だにしなかった事です。


少し私事を書かせていただきますね。

今、ここに参加されている皆様は既にご存じだと思いますが、私の主人が昨年の1月に亡くなりました。

まるなかベーグルは、東京から来られた新しいオーナーに事業譲渡しており、お店は現在もお陰様で営業しております。


元々、パン屋を始めたいと言い出したのは、亡くなった主人でした。
車の部品メーカーで設計技師をしていた主人は、パン屋で修行したことも、働いた事すらない全くの素人でした。


脱サラして、パン屋を始めたい、と言い出した主人に猛反対だった私。
なぜなら、金融と商社の出身なので、パン屋は全くの異業種だったからです。
そんな素人夫婦が始めたお店は、分からないことだらけで、全て手探りで、大変なことの連続でした。
独学で学び、試行錯誤してきましたが、何とかやってこられたのは、ベーグル専門店に特化したお店だったのかもしれません。


素人が始めたお店を経営していた私が、パン祭りをやりたい!と言い出し、実際に始めたことは、かなり無謀な事だったと思います。


きっかけは、代官山朝市でした。
お店を始めた頃、知り合いが代官山の蔦屋で、朝市を開催する責任者になり、「中さんのお店も出店してみない?」とお誘いを受けました。
お店の経営もままならないのに、イベントなんて、と思いましたが、沢山の方に知ってもらうきっかけになればと思い、出店を決めました。


代官山は遠く、朝7時から開催だったため、準備は大変でしたし、最初は売れ残る事も多かったです。
それでも、毎月欠かさず出店していくうちに、お店のファンがついて、茅ヶ崎までわざわざ足を運んで下さったり、通販で購入してくれたり、常連の有名なお客様がテレビで紹介してくれたり、雑誌に取材してもらったりと宣伝になり、ベーグルもあっという間に完売するようになりました。


他のお店の出店者さんたちと仲良くなり、イベントって楽しいんだ!と思うようになりました。
こんな楽しいイベントを茅ヶ崎でもやりたい!パン祭りとか楽しいのでは?と思うようになり、事あるごとに、色々な場所で「湘南でパン祭りをやりたい」と言うようになりました。


そのころは、小さな公園で、何件かパン屋さんを集めた小さなイベントを思い描いていたのです。
パン屋素人の私たち夫婦は、パン屋さんの友達も欲しかったし、同業者に色々聞きたい事があったから、というのもありました。


「湘南でパン祭りをやりたい」と言い続けて、2年ほどしたころ。
ある方が、私の話を聞いてみたいと言っている公園がある、と紹介してくれました。それが、辻堂海浜公園だったのです。
まさかあんな大きな場所が、私の話に興味を持ってくれるとは思っていなかったので、正直驚きました。


それでも、せっかくお話を聞いてくださるというので、責任者にお会いしたところ、私の熱意を感じてくれた園長や担当者が、ぜひやりましょう!と協力してくれることになりました。


公園側としては、プールが閉鎖されている閑散期に、プールを活用する機会が欲しかったようで、パン販売であれば、現場を汚すこともなく、大きな設備が必要でもなく、ちょうど良かったようです。


場所は確保出来ましたが、その後が大変でした。
出店者集めから、イベントに協力してくれる仲間集め、イベントの企画など、大変な生みの苦しみを味わうことになりました。


茅ヶ崎の小さなベーグル屋が始める素人のイベントなんて、参加してくれるお店があるのだろうか?と思いながら、お店に直接電話をかけて出店のお願いをしたところ、「面白そう! パン屋さんがやる、パン祭りっていいね。」と思ってくれるパン屋さんが出店してくれることになりました。


運営も、茅ヶ崎の知り合いにお願いし、ボランティアで手伝ってもらいました。

こうして、初回のパン祭りは、2016年9月に開催することが出来ました。


初回のパン祭りに出店された方なら強烈な記憶を残されているでしょうが、あの小さなプール前に、長蛇の列ができ、すごい集客力のあるパン祭りとなったのです。
集客には、ほとんどお金はかけませんでした。
というか、お金なんてありませんでしたし。
ただ、フェイスブックの活用と、パン屋さんに置いてもらうチラシだけは作って集客しようと頑張りました。


初めてのことだったので、口コミで沢山の人が宣伝してくれたことも大きかったと思います。
開催当日のお客様の列をみた出店者、私たち運営メンバー、公園側は焦りに焦りましたし、正直恐怖を覚えるくらいでしたが、同時にとても嬉しくて、興奮しました。

「パンが足りない。パンが足りない。どうしよう。」

悲鳴にも似た叫びをあげながら、当日を終えた記憶があります。


来場されたお客様からは、パンが全く買えなかった、会場へさえも入れなかったと大ブーイングでしたが、お陰様で、その次からも湘南パン祭りを開催出来ることになりました。


1回目が大成功(※集客に関してのみ)だったことから、出店してくれるお店も増え、出資してくれる企業も出て、運営体制も少しずつ整えていくことが可能になったのです。


そして4回目を迎えるはずだった去年の湘南パン祭りは、コロナの影響で1週間前に中止となり、今年も開催出来ない事になってしまいました。

正直、去年は私自身、パン祭りどころではありませんでした。


主人が突然亡くなって、葬儀もあるし、お店の存続やら、スタッフの事やら。
実行委員長であったけれども、ほとんどの仕事を他の皆に投げてお願いしてしまいました。本当に申し訳なかったです。
特に、長後製パンの齋藤さんは、次回から実行委員長をお願いしようと考えていた事もあり、本当に色々動いてくださって助かりました。


お店も事業譲渡しようと考えていたので、そちらの件でも動いていたのですが、お店も無事売却を果たし、お店のスタッフの雇用も確保できることになりました。


主人が亡くなって1年、お店を譲渡して半年経ち、さて、自分はどうしようか?と考えるようになりました。


お店も安定したし、パン祭りも今後続けていく体制が整ったし、私のここでの役目は終わったな、と感じました。
茅ヶ崎は卒業、実家に帰ろうかと。


幸い、茅ヶ崎のお店と自宅は、新しいオーナーが借りてくれることになりました。結婚前に勤めていた神戸の貿易会社に連絡すると、「戻ってきなよ。」と言ってくれて、仕事の復帰も決まりました。


実家の両親も健在で、慣れた仕事もあって、昔からの友達もいる。
こんなに有難いことはないな、と思います。


話が長くなってしまったのですが、こういう理由で、私はこの度パン祭りの実行委員長を卒業させてもらうことにします。


引継ぎは、長後製パンの齋藤さんにお願いしてあります。
フェイスブックやSNSでの情報拡散や情報管理などは、ブロガーの佐藤さんに引き続きお願いしてあります。
今年は無理でも、来年は開催出来ることを願っています。


その時は、もちろん、ボランティアスタッフとして、会場に手伝いに来たい!と思っています。


中途半端になってしまいましたが、今後も皆様の活躍と、パン祭りの存続を願って今日はご挨拶とさせて頂きたいと思います。


今まで、本当に色々とありがとうございました。
また、機会があれば会いましょうね。感謝を込めて

中 淑子

さとちゃん: 1973年早生まれ。2023年8月から老老認認介護をサポートするため実家暮らし。推しはSixTONESジェシー。使命はライトワーカーとしての任務を果たすこと。