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    Categories: 介護

その3:介護生活に飛び込むまでの話(後編)

完全に詰んだ

なるほど。

数日前に見たあの動画は私のことではなく、母親のことを言っていたのか。
母親の祖母に対する恨みつらみが、数十年の時を経て再燃。

わたしに用意された選択肢は2つ。

1)要介護度2で特養(特別養護老人ホーム)に入れない祖母の施設入居費用を負担する
【解説】特養に入れるのは要介護度3から

2)老老介護どころか認認介護状態の実家に戻り、介護のサポートをする
【解説】認認介護=認知症の人が認知症の人を介護すること

「車で30分の距離に住む弟夫婦に実家のサポートをしてもらう」

という選択肢が私の中にないのは、父親のときに弟夫婦、いや、弟嫁が親身になってサポートしてくれたから。さすがに次は私の番だ。

1を選んだとして、あの状態の母親を実家にひとりにしておくのは問題あり。
とういうことは、どのみち実家に帰るしかない。

あー、終わった。完全に詰んだ。50歳にして介護生活が始まるとは。

要介護度5のまま、もしや長生きしちゃう?と思われた父親が亡くなったとき、私は介護とは無縁の人生なんだと思ったのに。

なんで親ってふたりいるんだろう。しかも親の親までいるなんて。

これを読んでいるほとんどの人には、「結婚相手の親」までいるのか。

実家に帰ると決めてから、引っ越しをするその日まで。
ブルーな日々を過ごしてました。
快適なひとり暮らしよ、さようなら。

スピな人に言われたことは

仕事も暮らしもガラリと変わると覚悟した、2023年6月。

普段、だれかに相談をすることはないのに、直感でスピな人のアポを取る。

「老老介護なんて大変だから、実家に帰るのやめたほうがいいよー」

これはもう、その頃、散々まわりに言われていて、居宅事業所を運営している人にまで言われて、いい加減うんざりしていた。もっと別の意見が聞きたかった。

「一般的な話」はどうでもいい。私がどうすべきかの相談したい。プロなのに一般的な話しかできないんだな。

そして、7月のある日に会ってくれたその方(スピリチュアルな方)からは、「さとちゃんの転機のタイミングなんだねー」という肯定的な言葉とともに、こんなコメントをいただいた。

「お母さんを無理やり自分の思いどおりにさせてはいけない」

さすがです。あなたに会おうと思った私も、相当見る目ある。

母の生きる道

とはいえ、実家暮らし開始当初は、朝9時からやることなくて酒を飲み出す母の暮らしぶりに、イライラしっぱなしだった。

「お酒をやめたら?」
「認知症の診察を受けてみたら?」
「趣味や習い事を始めてみたら?また陶芸習ってみたら?」

そう提案したが、すべてに嫌な顔をされた。腹立つ。まじ腹立つ。
イライラしていると、頭の斜めうしろあたりから声がする。

「お母さんを無理やり自分の思いどおりにさせてはいけない」

ああ、はいはい、このことですね。無理強いはしていませんよ、あくまで提案ですから。

無理強いをすることなく、母を冷たい眼差しで観察していたら、徐々に考え方が変わってきた。

そもそも私自身が「母に長生きしてほしい」なんて1ミリも思っていない。
おそらく今日死んでもさほど悲しくない。今世はそういう人生だったんだねーと思うだけだ。そんな私が「生活を改めろ」と母に指示する矛盾たるや。

これが母の生き方なのだ。

良いとか悪いとか、私の物差しで決めつけたら失礼。おまえ、何様やねん。
母が己の人生で選んできたこと、選ばなかったこと、その結果がいま目の前にいる母自身なのだから。

同居する=それらすべてを受け入れること。

そこに気付けてからは、まったくのノンストレス。
母のお酒も毎月私がAmazonで注文している。
よりによってストロングゼロの500mだけど、ぜんぜん構わない。
一応、ストロングゼロの危険度は伝えてあるけれど、余裕で聞き流された。

ひとつだけやめてもらったこと。

「(おばあちゃんが)早く死ねばいいと思わない?」

私に同意を求めてくるのはやめてくれと伝えた。

祖母に対して「いつまでも長生きしてほしい」と願ってはいないけれど「早く死ねばいい」とも思っていないので同意する気はないから、もう言わないでもらえる?

さすがにここまで言われると、プライドの高い母は、一切口にしなくなった。よしよし。

母が恨むべき相手

そして、これは別記事で詳しく書くけれど、祖母の介護は楽勝だった。

最近知り合った、50代のベテラン看護師さんに言われた。

「おばあさま、99歳で要介護度2ということは、お身体は問題なくて、認知症で要介護度2なんでしょうね」

そうです。さすがベテラン看護師、お見事。私の話だけでよくわかりますね。

祖母は、曜日感覚はもちろんのこと、「次になにすればいい?」もわからない状態だけれど、「朝ごはん食べる前に着替えちゃおう!」とか「デイサービスのお迎えが来るよー」と誘導+軽いサポートだけすれば、あとは自分で動く。ゆーっくりゆーっくり動く。

おばあちゃん、むかし欠かさず見てたもんなー、おもいっきりテレビ。
健康意識がだれより高かったので、母が嫌がるほどの長寿に。文句は日テレとみのもんたに言うべき。

いますぐ現調にGO

実家に戻る前、あれだけ憂鬱だったのは、一体なんだったんだろう。
快適だと思っていたひとり暮らしは、本当に快適だったのだろうか。

以前は人助けをするときに、心に引っ掛かりがあった。

実家に寄り付かない私が、両親や祖母を気にかけない私が、被災地にボランティアに行くのは、なんか違わないか?

いまようやく、引っ掛かりから解放された。

なのですべては自分のため。

祖母の介護を通じて、ご先祖様を敬う気持ちも芽生えてきた。

愛情も心温まる思い出もない祖母は、私にとっては「生きているご先祖様」以外の何者でもない。

そんなもんなんだよ、みなさん。
あくまで私の場合ですが。参考になりましたでしょうか。

ネットで得た知識やプロのもっともっぽい意見を聞くよりも大事なことは。
まずは大ごとになる前に、実家の現地調査(聞きとり調査)を行うことです。

そのくらい、介護は当人の状態と周囲を取り巻く環境でガラリと変わります。

自分の家族のことなんだから、情報を取りに行く手間を惜しんではいけない。

そう思わない?

現場からは以上です!

さとちゃん: 1973年早生まれ。2023年8月から老老認認介護をサポートするため実家暮らし。推しはSixTONESジェシー。使命はライトワーカーとしての任務を果たすこと。